「『名古屋市子宮頸がん予防接種調査』に関する鈴木貞夫論文についての見解(2)-鈴木教授による「回答」について-」発表
薬害オンブズパースン会議は、2019年2月8日、「『名古屋市子宮頸がん予防接種調査』に関する鈴木貞夫論文についての見解(2)-鈴木教授による「回答」について-」を発表しました。
名古屋市が2015年に実施した「名古屋市子宮頸がん予防接種調査」について、2015年12月にその解析結果(速報)が公表されると、当会議は、直ちにこの解析方法を批判する意見書を名古屋市長に提出しました。これらの批判を受けて、名古屋市は、解析結果(速報)を撤回(ホームページから削除)し、最終的に統計解析を行わない調査結果のみを公表するという措置をとりましたが、2018年2月、解析結果(速報)の解析を行っていた名古屋市立大学鈴木貞夫教授が、論文を発表しました。
鈴木論文では、「ワクチンと報告されている症状あるいは副反応との間に因果関係はないことが示唆された」との結論が採られており、当会議は、論文の問題点を指摘する「『名古屋市子宮頸がん予防接種調査』に関する鈴木貞夫論文についての見解」(以下「見解」)を2018年6月11日に公表しました。見解では様々な問題点を指摘していますが、中でも根本的な欠陥として指摘したのは、HPVワクチンの接種後に見られる症状について、
ワクチン接種群と非接種群の発症率を比較した結果、24症状中14症状で、接種群の方が非接種群よりも有意に発症率が低い
という解析結果になっている点です。ワクチンと症状との関連がないのなら、接種群と非接種群で発症率に差はないはずですが、接種した方が発症率が減る、つまり健康になるという結果になっているのです。
解析が適切ならこのような結果は生じないはずですから、これは鈴木論文の解析方法に何らかの問題があることを示しています。見解では、原因としては、
① 年齢調整をすることが不適切であった可能性
② もともと接種群と非接種群の健康状態が同様ではなく、非接種群の方が健康状態が悪い集団だった可能性
③ 上記①と②が重複してより顕著に偏りが表れた可能性
の3つを指摘しました。
鈴木教授は、この見解に反論する回答書を公表し、その中で、接種者の方が発症率が低いという結果の原因は「非接種者のほうが、もともと体調や健康状態がよくないこと」(上記②)に起因すると認めたうえで、「それを大きく超えて悪影響が出るのが薬害であると考えている」としています。
しかし、この説明は、もともとの健康状態の差を超えない範囲で、ワクチン接種による発症率の差(上昇)が生じている可能性を認めています。つまり、もしもともとの健康状態に差がなければ、接種した人たち(接種群)の方が発症率が高い可能性が否定できないのです。
鈴木論文は、接種群と非接種群の発症率を比較し、接種群で有意に発症率が高い症状があるかどうかで因果関係を判断しているのですから、発症率上昇の可能性があるのなら、本来は「因果関係はないことが示唆された」という結論を導くことはできません。
また、上記①の年齢調整については、名古屋市が公開している名古屋調査のデータを独自に解析した2組の研究者によって、接種群において年齢とともに発症率が増加する傾向はみられないこと、及びワクチン接種の有無と年齢との間に交互作用が認められることから、鈴木論文が用いた年齢調整は不適切であるとの指摘がなされています。
すなわち、鈴木論文の解析では、上記③(①不適切な年齢調整と②もともとの健康状態の差の重複)により、結果に顕著な偏りが生じ、そのために、ワクチンを接種した方が健康状態がよくなるという不合理な結果が生じたと考えられます。
以上から、「ワクチンと報告されている症状あるいは副反応 との間に因果関係はないことが示唆された」とする鈴木論文の結論が誤りであることが、より明白となったといえます。
「名古屋市調査によってHPVワクチンと副反応の因果関係が否定された」ということはできません。